VOL.01
あめやが大切にしたいこと
[福岡]あまおう
あまおうの里、福岡を訪ねてあめやの原料の中でも大人気のあまおう。
「あまおう」よく耳にするこの名前、知らない人はいないのでは!?というくらい人気のいちごです。
でも、どこが産地なのか、すぐ頭に浮かびますか?
実は福岡県で誕生したあまおうは、大粒な果実の中に濃い甘みとたくさんの果汁を蓄え、一度食べたら忘れられない濃厚な味わいが特徴です。
そんなあまおうの旬は、11月~5月。どんな場所で、どんな方が栽培しているのか、産地を訪問してきました。
九州の北東端に位置し、温暖な気候に恵まれた福岡県が「あまおう」のふるさとです。
そして今回訪れた宗像市、玄界灘に面し3方向を山に囲まれた霜が降りにくいこの温暖なエリアは、福岡県内でも古く昭和30年代頃からいちごの栽培が始まった地域。近くには世界遺産で有名な宗像大社があります。
福岡県だけで栽培している「いちごの王様」
あまり知られていませんが「あまおう」は福岡県だけで栽培されている、人気がある高級いちご。
全国の果実が集まる東京の大田市場で行われるいちごのセリは「あまおう」からスタートします。
それだけ高値がついて人気がある「いちご」だというひとつの証のようなものです。
正式な登録品種名は「福岡S6号」。
「あまおう」はいちごの愛称であり、「あかい・まあるい・おおきい・うまい」の頭文字をとったもの。
数多くのいちごが流通している中、日本全国に流通しているのは「あまおう」だけです。
日本全国、ほとんどの人が知っている「あまおう」は知名度、ブランド力、品質のどれをとっても「いちごの王様」なのです。驚く事に外国の方にも「あまおう」は認知されています。
今回訪問したのは、JAむなかたに所属する松尾康司さん。
現在、JAむなかたのいちご生産者部会は53名、34歳から85歳までの幅広いメンバーで構成。
部会では「あまおう」のブランドを守るため、ベテランと新規就農者の交流が盛んにおこなわれ、勉強会を通し生産者同士のレベル向上に余念がありません。
現在いちご部会の方々が生産する品種は100%「あまおう」のみ。正真正銘「あまおう」と真剣に向き合った方々ばかり。年間350トンの出荷を誇ります。
松尾さんの圃場は土耕栽培ではなく「高設ベンチ栽培」という方法を採用。
いちごの苗は地上から1mほどの高さにあるベンチと呼ばれる台の上に、ずらりと植えられています。
以前は土耕栽培、藁で編んだ菰を被せ、真冬の霜から守りながらの栽培でしたが、現在はその手間もかかりません。
いちごは地面から浮いていますが、栽培層内に設置している温湯システムによって地温の確保が出来るようになりました。
また風通しも良く細菌等の抑制にもなると同時に、腰を屈めて作業をする必要が無くなり効率よく収穫ができます。
自然に立った時の身の高さと収穫する実の高さが同じなので、長時間の作業でも腕と足腰にかかる負担も少なくとてもラク。実は松尾さん、一緒にお仕事をされるお母様である初子さんの身体を気遣って微妙な高さを調整したとの事。母想いの優しさが、いちごへの愛情と重なっているようにも感じる温かいエピソードでした。
- JAむなかたに所属する松尾康司さん
ゆっくりと大きく育ってうまみを蓄える
いちごの収穫はひんやりとした朝早く、まだ気温の上がらない朝に行います。
朝採りは前日の養分が蓄えられ、日光にまだ当っていないから水分量が多く瑞々しい状態で収穫できます。
いちごは他の果物のような皮に守られていないので、収穫後は一度冷蔵庫に入れ、予冷と呼ばれる作業を行う事で実を引き締めます。さらに予冷作業を行うと運搬の際に柔らかいいちごが痛み難くなるというメリットもあります。
花が咲いてからいちごとして収穫できるまでの期間は1、2月頃なら50日程度、春だと25日~30日間ほど。
栽培期間の日々の平均温度を積算した合計が600℃を超える頃が美味しい収穫期と言われています。
一般的にいちごは5番花まで花をつけますが、「あまおう」は概ね4番花まで。ゆっくりと時間を掛けて育つことで、じっくりと大きく育ち、うまみも十分に蓄え味が濃くなります。
代々トマト農家だった松尾さんが「あまおう」の栽培を始められたのは7年前。最初は、わからない事だらけだったとか。いちごは1年に何度か収穫できるものの、栽培は1年に1回だけの作物。
日々の栽培の中で、定植、摘果などの作業、どのタイミングで何をしたか、肥料や水の量は良かったのか。
出来上がったいちごのカタチを見たら、おのずと正しかったかどうかが手に取るようにわかるようになりました。
露地栽培に比べ、ビニールハウス栽培は簡単そうに見えるかもしれません。けど、大変なご苦労があります。例えば温度や湿度も微妙な調整が必要です。
午前中は暖かい温度と湿度を保つことで同化作用がよく進み、いちご体内に栄養が作られやすくなります。午後はしっかりと換気をして、湿度を抜いて空気を入れ替えます。午前と午後のメリハリをつけることで、いちごが体内にしっかりと栄養を蓄えられるようになります。
温度や湿度管理が疎かになると苗が病気にかかるリスクが高まり、台風が来ればハウスごと守らなければならない。
収穫する時は、自分がやってきた事の答え合わせをしているような感じだと松尾さんは言います。
基本的ないちご栽培方法は同じでも、ベテランとの差が出るのはちょっとしたコツといちごへの想いやり。
ひとつひとつの想いが、「あまおう」の大きさや、美味しさに大きく左右される。そこが面白い、けど工夫はまだまだこれから。松尾さんの試行錯誤は続きます。
最後に、Amaya Etaroの商品と一緒に記念写真。
自分たちが作った「あまおう」が、東京でこのような商品になっているんだ・・・と少し誇らしげな様子でひとくち試食・・・「うゎぁー、美味しい!」とさらに感激。
「いつか、銀座のお店に買いに行ってみたいです」と嬉しそうにお話をしてくださったのが印象的でした。
収穫期も、そろそろ終盤。初夏には来年に向けて育苗がスタート。
今年よりもさら美味しい「あまおう」栽培、8年目のシーズンが楽しみです。
- 2019年5月
- あめや商品開発室
- 写真
- 野瀬了道 福岡県福岡市在住