Ameya Eitaro(あめやえいたろう)

Ameya ROOTS VOL.05

あめやが大切にしたいこと

[広島]大長レモン

  • VOL.05 広島大長レモン
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  • VOL.05 広島大長レモン

大長レモンの里、広島を訪ねて嬉しくて笑いたくなる時も、悲しくて泣きたくなる時も、黄色いレモン。

日本で最初、日本で一番。

大長(おおちょう)レモンのふるさとは、広島県呉市にある瀬戸内海に浮かぶ周囲26kmほどの大崎下島。広島駅から車で約2時間、人口2,000人程度の島内にはコンビニも無く、とても静か。
明治31年(1898)、広島県で最初にレモン栽培が始まった場所と言われ、120年以上の歴史をもつ由緒あるこの島、元々はみかんの生産地として全国的に名が知られ、別名「黄金の島」と呼ばれています。
国産レモン栽培の発祥地である広島県、年間生産量約1万トンのうち、63%に当たる6,350トンが広島県産です。

じいちゃんの畑を継ぎたいという熱い想い

今回訪問したのはShintaro Farm、ご案内頂いたのは新規就農して3年目の竹内信太郎さん、31歳。
広島生まれ、農家とは関係なくご両親は会社勤めの一般的な家庭で育った幼少期、夏休みに大崎下島で柑橘栽培をされていたじいちゃん、ばぁちゃんがの家に遊びに行った・・・そんな思い出しか無かったそうです。
以前は食肉関連の仕事をされており、産地であるスペイン駐在のご経験もあるそうです。
バリバリと仕事をこなしていた頃、ふとした事で当時の仕事への取り組みに疑問を持ち始めていた時期に大好きだったじいちゃんが病気で入院。通院や介護といったお世話をしないといけなくなり、ご自身が広島に帰郷。じいちゃんのお世話をしている中、ふとした時に立ち止まり、これからの自分の人生を考えた時、自分のやりたい仕事を自分のペースで取り組んでいきたい、そんな仕事をしたいと漠然と考え始めた時に、跡継ぎのない祖父母の畑を継ぎたいと確信に変わったのだそうです。

しかし大好きなじいちゃんに相談するも、「やめとけ!」「東京で頑張れ!」「帰ってくるな!」と猛反対。しかし、じいちゃんの柑橘園を引き継ぎたいというその想いは変わらず、むしろ強くなったのかもしれません。家族を説得し、親戚のおばさんにも相談。周囲の協力を得てなんとかおじいちゃんを説得してもらい、畑を継ぐことを了承。
JA広島の果樹農業研修制度を利用して28歳の時に晴れて新規就農、現在に至ります。
地域を管轄しているJA広島ゆたか管内では650人の生産者さんがいるものの、平均年齢は75歳。周辺の農家さんに比べれば、孫みたいな存在の竹内さんは生産効率も栽培技術もまだまだ勉強中、大崎下島のこれからのレモンを支えていく若きホープは、ベテランのみなさんに支えられながら日々成長しています。

皮まで美味しい!

旧・大長村(現在の呉市豊町大長)の地名から周辺で収穫されるレモンは「大長レモン」と名付けられ出荷されています。
大長レモンはビラフランカという品種。よく見かけるラグビーボール型の輸入レモン(リスボン・ユーレカ等)に比べて、少しずんぐりむっくりで、果頂部の突起の周りにできた丸く深いくぼみが特徴です。
選果場で見かけた大長レモンは良く見かける外国産のレモンと違い、果皮の色が濃く鮮やかな黄色のものが多かったのが印象的、見るからに美味しそうでした。
そんな色からも容易に連想できる様に、大長レモンは香り高く、とてもすがすがしい味わい。温暖な瀬戸内海式気候で太陽をいっぱい浴びて育った証拠です。
また防カビ剤が使われていないので、安心して皮まで丸ごと食べられます。
あまり知られていませんが、外国産レモンは収穫後に船で輸送されて、店頭に並ぶまでに1か月近くかかります。国産レモンは収穫後、旬のシーズンであれば数日後には店頭に並びます。この新鮮さ、とにかく驚きます。意外かもしれませんが、レモンの酸味に大差はないと思われるかもしれませんが「酸味の中に甘み」や「柔らかな酸っぱさ」が大高レモンの特徴なのかもしれません。
安心と安全だけではなく、心地良い美味しさも兼ね備えた大長レモンは、皮まで無駄なく使いたいと思わせます。

たゆまぬ努力

レモンは柑橘類の中では非常に寒さに弱い品種です。氷点下になると果実や枝が傷み、ひどい時には樹ごと枯れてしまうことがあります。
JA広島ゆたか管内はもともと温暖な気候ですが、さらに瀬戸内の島であることによって周囲を海に守られ、最低気温が下がりにくいのです。
実は「大長レモン」の栽培の歴史も古く、みかんと同様すでに100年以上です。風の当たりにくい園地を選んで植栽を広げてきた「大長レモン」、今ではみかんに次ぐ生産量になりました。
感じて欲しいのは「安心・安全」と「甘さ」です。出荷農家も「皮も食することが多いレモン」である意識が高く、品質を守るための必要な薬剤防除しか行いません。
露地栽培で、且つ樹上成熟させるレモンは、土壌環境がその味を大きく左右します。
きれいになるからといって、雑草を必要以上に抜いたりしません。ある程度雑草が増えていることで、土が乾燥せずに適度な湿気を含みます。少しぐらいの敵があったほうが、強くたくましいレモンが育つ、農薬や除草剤には頼らない栽培方法を模索し続け、徹底してこだわり続ける、そんな熱い情熱をもってらっしゃる生産者さんです。

都内で生活をしていた時は、住んでいるマンションの隣室にどんな方が住んでいるのかもわからず、挨拶すらする事もない殺伐とした生活にストレスを感じていたそうです。
しかし現在は外に出れば誰かしらが居て、「こんにちは」「最近調子はどう?」なんて声掛けが自然にできる。当たり前の事かもしれませんが、自分らしくストレスなく生活ができているように感じるそうです。竹内さん自らが望んだ「自分のやりたいことを、自分の考え方で、自分のペースで取り組む」新規就農したばかりですが、挑戦はこれからも続きます。

取材が終わり竹内さんに大長レモンで作られた飴をご試食頂きました。
目を大きく見開いて、白い歯を見せながらさわやかに「うわっ、レモン!!」
まんべんの笑顔でなんだか嬉しそう。
「香料などの添加物を使わなくても、ここまでレモンの風味が活きてくるんですね」とご感想を頂きました。
収穫されたレモンを特殊製法で果皮まで丸ごと加工して使うので、レモン香りや酸味だけではなく、果皮にある独特なビター感も再現できるのです。
「いつか東京のお店にレモンの飴を買いに行きたいです」そう言ってニコッと笑ってくださったそのお顔、私たちも商品を販売するたびに思い出す事でしょう。

2020年2月
あめや商品開発室
写真
市山崎貞一 徳島県吉野川市在住

EDO TOKYO KIRARI(江戸東京きらりプロジェクト)

  • 大崎下島
  • 大崎下島
  • 大長レモン畑
  • Shintaro Farmの竹内信太郎さんShintaro Farmの竹内信太郎さん
  • 大長レモンで作られた飴
  • Shintaro Farmの竹内信太郎さん
  • あめや商品開発室とShintaro Farmの竹内信太郎さん